偽りの婚約者
「雅人……、千夏さんと二人だけで話しがしたいんだけどいいか?」
「……?何の話しだよ」
「雅人、喉が渇いちゃって……、しばらく付き合ってくれない?
話したいこともあるから、千夏さん……少しの間お願い出来るかしら」
「は、はい、大丈夫です」
彼は、しばらく渋っていたけど彼のお母さんに病室から引っ張りだされて行ってしまった。
東條さんのお父さんと二人で話しって、何を言われるのか……。
相応しくないって言われたらどうしよう。
「千夏さん、うちの馬鹿息子のせいで貴女を巻き込んでしまって申し訳ない……許して下さい」
東條さんのお父さんから言われた言葉は予想外の事で戸惑ってしまった。
「えっ、あの……東條さんのお父さん!?」
「あいつが復讐なんて馬鹿な事を考えるから、貴女には迷惑をかけてしまって……。もっともあいつは、不甲斐ない私のせいで復讐なんて事を考えてしまって――――――」
東條さんのお父さんは復讐の事を知っていたんだ。
もしかして……お見合いのことも……。
「あ、あの……頭を上げて下さい。
復讐の事はもう、過ぎた事ですし……
父も母も東條さんから話しを聞いて、その上で私達の事も許してもらいましたから」
「千夏さん、ありがとう……!
貴女が雅人の傍にいてくれると、私達は安心できます」
「いえ、とんでもないです。
私なんて、東條さんの足を引っ張ってばかりです……。」