偽りの婚約者
「雅人は最近、雰囲気がずいぶんと変わりました。
それは……私は貴女のおかげだと思っています。
滝本興産のお嬢さんと付き合っている時は、何だか無理をしているように見えてね……。
でも今はそんなふうには見えない。私も妻も安心しているんですよ」
それから、しばらくして……東條さんはお母さんと戻ってきた。
帰り際に病室の外で、見送ってくれた東條さんのお母さんに「雅人の事お願いしますね」と頭を下げられた。
私もそれに続き頭を下げた。
東條さんはお父さんとお母さんに、すごく想われてるんだなって感じた。
来るときは、ものすごく緊張してたけど。
今は濃い霧が晴れて周りがはっきり見えて来たような、何だかすっきりした気分だ。
東條さんのお父さんとお母さんに会って、話しが出来て良かった。