偽りの婚約者
そう言いながら、東條雅人は真剣なまなざしで私を見た。
「どうしても、お前に婚約者になってもらう必要があるんだ」
「……いったい何をするつもりなんですか?」
「復讐だ」
「復讐……?」
最初は冗談だと思った。
だって……この人は柔らかい笑みを浮かべていたから。
「……冗談を言ったんですよね?復讐なんて……」
そう聞き返した時、さっきまでの笑みは消えてしまい。
唇を引き結んだ表情はとても冷酷なものに変わっていた。
「冗談なんか言ってない」
彼の目は冷たい光を放っていて、彼が本気なんだって事が分かってしまった。
……もし、こんな憎しみの籠った冷たい目を自分に向けられたら。
恐い……そう思ったら体が震えてきた。
ここから逃げなければ……。
私は椅子から立とうと足に力を入れた。
「どうした?お前……」