HELP

一号車

 「変な約束しちゃったな」
 胡桃は後悔した。既に鳩の目のように小振りな目をした鳩葉は立ち去っていた。これだからミュージシャン志望や、ミュージシャンという職業を生業にしようとしたり、生業にしている人間は扱いづらいし風変わりだ。
「後悔してますか?」
 銀次が言った。今となっては二つの顔を持つ男として胡桃は認識している。彼はミュージシャンだったのだ。それも、そこそこ有名な。
 後悔。
 胡桃は考え方を変えた。人は後悔するが、進んでしまった時間の針は元には戻せない。なので後悔する人生なら、それを糧に生きるような人生、それを変えるような運命を歩みたい。
< 200 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop