ひまわりの涙
そっか…

不思議はなかった。

鏡はお兄さまの側近。当たり前か。

恐る恐る部屋へと入っていくとそこには何にもなかった。

お気に入りのソファーもお気に入りのコーヒーカップも…

それなのに不思議と心は平穏だった。

奥に入っていき寝室だった部屋を覗く。

「あっ!」

思わず大きい声がでた。

そこにはいつも側に居てくれた大好きなクマのぬいぐるみがあったから。

「どうして…これだけ?…」

そっと抱き上げ抱きしめる。

暖かくてホッとする柔らかさが私を包んだ。

「春仁様に言われてた。それだけ残すようにと」

「どうして?」

鏡の方に振り向きながら問いかけた。

「さぁな…俺には分からないが、多分お前が戻ってくること知っての事じゃないか?」

戻ってくる?

そっかぁ、私が自分の目で確かめに来ること知って…

何もかもお兄さまにはお見通しって訳ね…

諦めなのか、自分でも分からない笑みがもれた。
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