《改稿中》V系霊媒師「咲邪」†SAKUYA†《改稿中》
「そうだわさ、斬汰。音魂とはそういう物なのさ。

 霊や魑魅魍魎は音魂としての念波が無くなれば霧散する。

 しかし人間の心は音魂が発せられている間に食い荒らされて、餓鬼へと化すんだわさ」


 深く吸い込んだ煙を鼻から吐き出しながら覇龍が立ち上がる。


「ということはぁぁ、早く手を打たねぇとぉ、カシカシファンの子達がやべぇのかぁぁ?」


「そういう事になるわさ。愚図グズしてたら駄目だわさっ」


 萌えリンはそう言って一瞬激しく燃え上がり、辺りを眩く照らしたかと思うと消えていた。


「何? なんなのよっ! もっと聞きたいことが有ったのに!」


「あの人魂。いつも肝心なトコで居なくなるんだ。必ずだ」


 斬汰は怒りをあらわにして言った。

しかしこれからリハーサル迄は時間が有るので、彼らは暫くの間、成り行きを見守る事となった。


───────


「がつ、がつ、ぐがっ!」


 そうして彼らがライブハウスの周りをぶらぶらしていると、物陰のゴミ置き場から異様な音が聞こえてきた。


「何? 猫かしら?」


「違うっ、あれを見るんだ。人間だっ」


 ゴミ箱を漁っていたのは全身黒ずくめの女の子だった。


「あのファッション。『カシカシ』のファンの子だわ?」


 彼らは一様に黒装束をまとい、猫耳ならぬ『鬼角オニヅノ』を付けている。それが『鬼の子』と呼ばれるカシカシファンの正装だった。


「ガゥルルルル……」


 咲邪達に気付いた彼女は、残飯を咥えながら振り返る。


「貴女! 汚ないからやめなさい!」


「グルル……ガァァァッ!」


 咲邪の制止にも構わず彼女は大きく吠え、咲邪達を威嚇すると何処かへ逃げ去った。


「あの目、獣の目だったんだ」


 思い返して斬汰が気色ばむ。振り返った彼女の目は、縦に筋が入った猫のような瞳をしていた。もう既に、ファンの餓鬼化は始まっていたのだ。


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