《改稿中》V系霊媒師「咲邪」†SAKUYA†《改稿中》
「ううぅぅ〜ん。一体どうすりゃぁいいんだぁぁ?」


 みんなはそれぞれ難しい顔をして考えている。またあの辛かった修行の日々へ逆戻りすることは、どうしても避けたい彼らだった。


「そうだ! 斬汰。あれ位のドラミングは出来て当然って貴方言ってたわよね?」


 咲邪が顔を輝かせて斬汰に向き直った。


「あ、当たり前だ。俺だって昔はツーバス踏んでたんだ」


 斬汰が『クロレト』に加入する前に参加していたバンドは、所謂ゴリゴリのヘヴィーメタルバンドだった。スラッシュメタルとカテゴライズされる曲調は、16分音符のビートをバスドラで踏み続け、疾走感と重量感を生み出していた。


「かいチョンに言って、カシカシと同じバスドラを揃えて貰いましょう! 現地ファン獲得の為に、アレンジを変えるとか言ってネ!」


 渋い顔でタバコを吹かしていた覇龍も一転、手を打って頷いた。


「そうかぁぁ。かいチョンに用意させたそれとぉ、カシカシのバスドラをすり替えてしまうんだなぁぁ?」


「よっしゃ! 俺もその作戦に乗ったんだ」


 斬汰は早速かいチョンへオーダーを出すために、隣室へ乗り込んでいた。


───────


「ハァッ、ハァッ。仕入れて来ましたよぉ! ホントに人使いが荒いんだからっ」


 丸い大きなドラムケースを2段に重ね、ショッピングキャリアにぐるぐる巻きにして、かいチョンは何とかライブハウス迄辿り着いていた。


「アーティストの湧き出るエモーションに応えるのも、製作側の務めだ」


 斬汰はさも当然のように、かいチョンを横目で見ながら言い放つ。


「丁度メーカーのショップが県の中心部に有ったから良かったんですよ? それじゃなかったらとてもとても……」


「どうも有り難う。かいチョンご苦労様」


 咲邪は皆まで聞かずに缶コーヒーを渡して、かいチョンの苦労をねぎらっている。


「1人でも多く、ファンのゲットをお願いしますよ?」


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