《改稿中》V系霊媒師「咲邪」†SAKUYA†《改稿中》
 斬汰はその巨大化した手のひらをドラムケースに打ち下ろした。



  バキバキッ グワシャッ!



「ウォォオオンッオオンオオン……」


 哀れドラムケースは粉々に消し飛び、怨念の上げる断末魔の叫びがステージ上に響き渡る。


「やったわっ! これで一先ず安心ねっ。定吉っ、有り難う」


「おいおい折角シャバに降りてきたってのに、もうおしめぇって……」「ごめんね、ヒュッ」


 二本指で作った手刀を咲邪が振ると、定吉の霊は言いたい事も言えずに祓われた。


「よぉぉし。結界を閉じるぞぉぉ、アキシャビアウン」


 覇龍が真言を呟くと、今までモノクロだった空間に色が戻り、そして何事も無かったように時間が動き出す。


「じゃあ後は、ファンの子とメンバー達ねっ」


 咲邪達はその機が来るライブ本番迄、作戦を練りながら待つ事にした。


───────


 咲邪達『クロレト』のライブは概オオムね好評の内に終わっていた。ツーバスを使わずに済んだ斬汰がホッと胸を撫で下ろしていたのは秘密だ。

しかし集まったオーディエンス達の本命は、誰あろう『カシカシ』の演奏だった。オールスタンディングの客席に犇ヒシめいている人々は、殆んどが黒い服を着て、銘々に趣向を凝らした『鬼角オニヅノ』を生やしている。

登場のS,E,(効果音)も何も無く、それは始まった。



  タラララ タラララ……



 ゆっくりとマイナー系のアルペジオが奏でられる。



  ズクジャァァァン!



 そしてヘヴィなコードが陰鬱で重厚な空間を作り出す。



  ダン! ドコドコドコドコドコドコドコドコ……



 目にも止まらぬペダリングで繰り出されるバスドラム。まるでそれはドラムロールのように会場を席巻する。



  ギャァァァ! ギャァァァ!



 我を忘れて叫び出す鬼の子達。


「すげえ。奴らリハの時は隠してやがったんだ」


 この激しいドラミングにはさすがの斬汰も舌を巻いている。


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