《改稿中》V系霊媒師「咲邪」†SAKUYA†《改稿中》
 覇龍が梵字を放つとステージと客席が結界に依って二分された。


「定吉、ステージ側だけイカサマを解いて!」


 咲邪は定吉にウィンクする。


「がってんだ。任しときぃ」


 定吉が腕を振るとステージ側の色が元通りの自然色に戻る。するといきなり時が動き始めたカシカシのメンバーがポカンと口を開け、ピンク色の結界で包まれた客席を見ている。


「ごめんなさい。びっくりしたわよね」


「なんだ貴様。儂らの邪魔をするなっ!」


 さっきまでは普通の若者に過ぎなかったカシカシメンバーは、演奏中だった為に憑依された霊の性格が強く出てしまっていた。


「駄目だぁ、咲邪。あいつらから鬼の霊を引き出さなきゃぁぁ」


「でも私の熊には定吉が降りてるし、カシカシは5人も居るのよ?」


「貴様ら。何をごちゃごちゃヌかしておる!」


 カシカシメンバーは正に鬼の形相で咲邪達に喰って掛かる。


「おい咲邪、これに降ろすんだ。鬼の子達の人形、カッパラって来たんだ」


 斬汰が集めて来たのは鬼のぬいぐるみだった。リアルな物からアニメ風の物迄、様々な鬼が並んでいる。


「ええっ? 同じテディベアには降ろせるけど、これは……」


 かと言ってテディベアのぬいぐるみを買いに行っている暇は無い。痺れを切らした斬汰は咲邪に鬼のぬいぐるみ達を押し付けた。


「四の五の言ってないでやってみたらいいんだ!」


「そうでい、一か八か降ろしてみりゃいいじゃねぇか。俺っちが付(憑)いてるんだぜい?」


 定吉も加わって捲し立てる。前世で博徒だった彼は、驚くべき強運の持ち主なのだ。


「解ったわよ、やるわよ。やればいいんでしょっ……のうまく……かんまんっ喝!喝!喝!喝!かぁぁあつ!」


 咲邪が気合いを印に込めて振り下ろすとカシカシメンバーは脱け殻のようにうずくまり、沈黙した。代わりに鬼のぬいぐるみ達が電流に打たれると、戸惑いながらも次々に立ち上がった。



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