スイート・プロポーズ
 兎にも角にも、これで誕生日プレゼントの悩みは解決した。

「さ、お昼食べに行こう!」

「うん」

 綺麗にラッピングされたネクタイピンを受け取り、円花はため息をつく。
 これを手にしたと言う事は、夏目と話すきっかけを得たと言う事。ーー逃げられない。

「何食べよっかな〜。ハンバーグがオススメって、雑誌に書いてあったけど」

「食べ過ぎると太るわよ。デスクワークだし」

「気にしない気にしない。私の楽しみは、食べる事なんだから」

 そう言えば、知り合った時も美琴はパンを食べていた。入社式の直前で、お腹が空いてるから、と言っていた。

「デザートは何食べよっかなぁ」

 店を出ると、美琴は楽しげに歩き出す。
 その姿が羨ましくも思えて、つい笑顔が浮かんでしまった。




ーーーー……。

 始業前の静かな時間、円花はまた悩んでいた。理由は、先日美琴と共に買いに行った誕生日プレゼント。
 それを、いつ渡すのかを考えていたのだ。
 これを渡すのをきっかけに、話をすると決めている。気持ちは既に決まってはいても、朝から話すのは躊躇われる。
 また話せなかったら、3度目はないかもしれないから。

「…………」

 それに、まだ自分の気持ちが整理できていない。
 この日まで、色々と考えた。
 それなのに、自分の気持ちが分からないなんて。

「……どうしたいのかしら、私は」

 自問自答を、何度も繰り返した。引き止めたいのか、待ちたいのか、それともーー別れたいのか。
 自分の気持ちだから、誰に相談する事も出来ない。

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