スイート・プロポーズ

気にしてしまう自分が情けない。

告白した張本人の夏目は、至って普通だというのに。


「小宮さんは、部長が教育係だった、って聞いたんですけど、本当ですか?」

「そうよ。誰から聞いたの?」

「倉本さんです。歓迎会で言ってました」

(あのお喋り男め)


倉本は酒癖はさほど悪くないが、アルコールが入るとお喋りになる。


「部長、厳しいですよね」

「そうね、厳しかったわ」


あの頃のことを今思い出しても、苦笑いしか出てこない。

夏目の半分は厳しさで出来てるんじゃないか、っていうくらい、厳しかった。


(トイレでひとり泣いたこともあったわね)


どんなに悔しくても、意地でも夏目の前では泣くまい、と唇を噛んで涙を堪えていた。


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