小さな光 ~月と太陽~
少し治まったはずの涙がまた出てきた。


「藤が、いなきゃ、ヤダのぉー」


「梓…」



あたしは藤の腕の中にいた。


温かいこの腕の中からあたしは、

絶対に離れたくない。



「梓」


あたしは藤の背中に手を回して藤にしがみついた。


「あたしには…藤が…藤が必要なの。

藤がいなきゃ、ダメなの」


「うん」


「明日も、明後日も…藤といる。

いたいのぉー」


「うん」


「離れたくない…」


「うん」


さっきから藤は「うん」としか言ってくれない。

あたしはそれが不安になってきてしまった。


「なんで、藤は“うん”しか言わないの?

あたしと離ればなれでもいいの?」


「よくないよ」


藤は全く動揺せずに冷静でいる。


あたしとは逆だ。



あたしは藤と離れると分かった時点でもう回りは一切見えていなかった。


藤を見ているとあたしだけが藤を好きなように思えてくる。







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