君に、溢れるほどの花を
どこに行くのか、なにしに行くのか。
そういうことを一切告げず出て行った咲月は、夜の十一時を過ぎても戻ってこなかった。


待たずに寝ていろとは言われたが、雨流は少し心配で、しばらく起きて待っていた。
でもあまりに遅く、いつの間にか寝ていたようで、咲月に起こされて目が覚めた。
まだ日は昇っていないようだった。


「・・・眠い」


ぼんやりと見上げれば、苦笑を返された。


「悪いね。もう少し寝かせてあげたいけど、そうも言ってられそうにないんだよ」

「ふわぁぁふゅ~」


雨流は、欠伸ともため息ともつかない息を漏らしつつ、ゆっくりとベッドから下りた。







「こんなところ、知らなかった・・・」



急かされるままに準備して、連れて行かれたのは図書室の奥の奥。
咲月は、古い本ばかりが収められる本棚の前に立ち、おもむろにその本棚に手をかけた。
なにをするつもりなのかと思っていれば、ガッと勢い良く横にずらした。


(・・・・・・)


そこに現れたのは、地下へと続く階段で。

一瞬雨流は今の状況を忘れ、この図書館の構造はどうなっているのかとどうでもいいことを考えてしまった。



「この図書館は、まあ、いろいろとアレだから」


雨流の呟きに対し返ってきたのは、なんだかよくわからないもので。


(・・・あれって、なに・・・?)



薄暗く狭い通路を歩くこと数分、ようやく咲月が足を止めた先には、上へと続く階段があった。
ただし、その先は天井(ここは地下だから、床と言うべき?)で塞がれているようだったが。
それでも咲月は気にすることなく階段を上ると、天井(床?)を少し変わったリズムでノックした。

トン、トトトトト、トン、トトン

するとすぐに同じようにノックが返ってきた。
さらに咲月がトントンとノックを返せば、小さく軋むような音のあと、ゆっくりとそれは開けられた。

その先にいたのは―――。



「おはよう、雨流」
「おはよう、雨流ちゃん」


「・・・」



幼馴染である双子の日向(ひなた)と灯影(ほかげ)だった。




< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop