彼女志願!2nd
眼鏡の奥の瞳が、私を切なげに見つめる。
穂積さん、苦しそうだ。そんな顔しないでいいのに。
私だって編集者にお世話になってる作家なんだから。そのくらい理解できるよ。
せめて穂積さんが気持ちよく仕事に行けるように、見送らなきゃ。
「いいんですよ、気にしないでください。私、適当にぶらぶらしてから帰りますから」
「本当にごめんなさい」
「穂積さん……私、ちゃんと気分転換できたし、デート、楽しかったです」
気にしないで、という気持ちを込めて、手を伸ばし、穂積さんの指先をつかむと、穂積さんの体から少し力が抜けるのが伝わってきた。
「夕食には戻れますか?」
「――出来れば。電話しますね」
「はい」
もしかしたら夕食までに戻ってこれないかもしれないなぁと思いながら、私は駆け足で立ち去っていく穂積さんを見送った。