ガラスの靴をもう一度


「否定したい気持ちは分かるけど、あなたの顔を見たら言い辛いからって」

「うそ…」

やっぱり、信じられない。

「箱は潰れていたから雅貴が捨てたわ。この靴も雅貴が捨てるって」

「嘘です!そんな事、信じられるわけがない」

だって、これはガラスの靴で、そんな簡単に捨てるなんて言うはずがないもの。

だけど麻生さんは、非情までに言ったのだった。

「花井さん、あなた雅貴を誤解してるわよ」

「え?」

「雅貴はあなたが思う様な、優しい“お兄ちゃん”じゃない。ごく当たり前にいる男の人よ」

「意味が分かりません…」

何が言いたいのよ。

麻生さんを睨む様に見る。

「私たちね、この靴を拾った日、ホテルに行ったの。どういう意味か分かるでしょ?彼がずっと思ってるのは、私と過ごした6年間よ」

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