モノクロ
「そういやさ」とショウが話し始める。
「アキ、いい上司持ってるな。アキが自信がなさそうにすると、すかさず入ってくる佐山さんのフォローがたまんなかった」
「う……っ、ごめん。やっぱり自信がなかったところバレてたよね……。言い訳でしかないんだけどこういう企画のメンバーになるのって初めてで、勉強も用意も足りなかったなって反省してる……。佐山さんがいたから話も進められたと思うし……。
佐山さんには本当にお世話になってて、この企画がここまで進んだのも佐山さんの力がすごく大きいの。不甲斐なくて申し訳ないです……」
あまりの情けなさに私は「ごめんなさい」と机に頭をぶつけそうなくらいに頭を下げてしまう。
「いやいや、そんな謝らなくても。俺は“初めて”って誰でも通る道だからそういうの全然いいと思うし、しかもアキと一緒に仕事できるとか超楽しみだし!」
「……ありがとう、ショウ」
「それよりも気になるのはさ」
「え?」
「アキ、マジで顔つき変わったよなー。仕事の場ってのもあるんだろうけど、やっぱり何か雰囲気違う気がする。最近あんまりイベント来なくなったことと関係あんの?」
「え? 私、雰囲気、変わった?」
「うん」
「自覚してなかったけど……仕事だから、かなぁ? ここ1年ね、仕事がすごく楽しいんだよね。前は何に対しても受け身で、次々と渡される仕事をどうこなすかって必死だったんだけど……、この企画を作り始めてからはいろいろ勉強することも多くなったし、今はこんな風に企画の仕事の中枢にも入れてもらえるようになったから。仕事始めてから5年経って、やっと自分で動けるようになれたのかもしれない」
「へー、いいことじゃん」
「うん。ほんと、そう思う」
自分で動けるようになった理由はたったひとつ。
紀村先輩が背中を押してくれたおかげだ。
先輩と出逢ったあの日がなければ、今の私はここにはいないだろう。それだけは断言できる。
先輩のことを思い出すと、胸がきゅっと締め付けられる感覚がした。
……何か、先輩に会いたくなってきちゃったな……。
実は、三神さんとランチした日から、何となく先輩にも会いづらくて。
社内で見かけた時もつい避けてしまうほど。
でもそんな行動とは反対に、私の心の奥底では毎日、先輩に会いたいという気持ちでいっぱいだった。