モノクロ
そうこうしているうちに、先輩が私のことに気付いてしまった。
先輩から向けられた笑顔に、大きく心臓が高鳴る。
「さきこじゃん。そんなところで何してんの?」
「あっ、おっ、お疲れ様です!」
「ん。お疲れ」
「あの、企画のイラストレーターさんと打ち合わせで、見送ってて」
「ん、今の?」
「あ、はい」
「へー。頑張ってんじゃん」
「至らないことが多くてちょっとヘコんでますけどねっ」
「最初は仕方ないって。佐山のフォローはあるんだろ?」
「それはもうバッチリ! 本当に佐山さんには頭が上がりません」
えへらと笑うと先輩の手が私の頭に伸びてきて、くしゃりと撫でてきた。
「!」
「さきこなら大丈夫。今からたくさん吸収すればいいから、頑張れ」
「はいっ! ありがとうございます」
先輩からのエールがすごくすごく嬉しくて、泣きそうになってしまう。
でも必死に笑顔を先輩に向けるんだ。
「あ、そうだ」
「え?」
「さきこ、今日ってこれから空いてるか?」
「へ?」
「ほら、この前絢と話したろ? 飯行こうって。今日の昼に絢から連絡あって、今日行こうって話になったんだよ。何も予定ないなら、さきこも行こうぜ」
「……」
三神さんが動き出した、と思ったと同時に、私の頭の中には三神さんと二人でランチに行った時に言われた言葉が浮かんでいた。
『今もまだ本気で隼人のこと好きなの。別れてからもずっと隼人のことだけを見てる。……また付き合いたいと思ってるの』
あの真剣な瞳は日が経っても忘れることができなかった。
それくらい三神さんの先輩に対する真剣な気持ちが伝わってきたから。
先輩と三神さんがよりを戻すなんて、本当は嫌。
私だって先輩のことが好きだから。
でも、先輩のことをほとんど何も知らない上に、彼女でも何でもない片想いをしているだけの私が、それを邪魔する権利なんてないのが現実で。
以前付き合っていた二人の間に割り込むことなんてできるわけない。
だから、この誘いには乗っちゃいけないんだ。行っちゃダメなんだ。