モノクロ
 

私は湧き上がってきそうになる嫌な気持ちを必死に抑えて、どうにか断りの言葉を言おうと必死に口を開こうとするけど、なかなか言葉が出てきてくれない。

なかなか返事をしない私を不思議に思ったのか、先輩が私の顔を覗き込むようにして身体を屈めてきた。


「さきこ?」

「! あっ、えっと」

「あ、もしかして遠慮してんのか? 別に同期じゃないからとか俺も絢も気にしねぇって! うまいもん食えるから来いよ。な?」

「……っ」


先輩の優しい笑顔に決意が揺らぐけど、仲良く話す先輩と三神さんを見ながら、笑顔で過ごす自信なんて全くないのが事実。

三神さんがいない今でさえ、こんなにぐちゃぐちゃの気持ちが心の中に渦巻いているんだから。

先輩に変に思われるくらいなら、やっぱり行くべきじゃない。

私は引きつりそうになる顔を必死に笑わせて、口を開いた。


「今日は、残念ながら用事があって無理なんですよ~! 二人で楽しんできてください!」

「そっか。急だし仕方ないか。じゃあ、今度は行こうな」

「……はい」


私の断りに何の疑いも持たずに先輩は納得する。……用事の内容を聞かれることもなく。

所詮、先輩にとって私はそんな存在なんだ。

“後輩”だから誘ってくれるだけの存在。

用事が何であろうと、どうでもよくて。

きっと“用事”が“男と会うこと”であったとしても、先輩は何も気にしない。

そんなものなんだ。


「……じゃあ、行きますねっ」

「あ、うん。俺、総務寄る用事あるから、ここで。またな」

「はい。お疲れ様です」

「ん。お疲れ」


先輩と笑い合って、別れる。

その途端、虚しさが襲い掛かってきて、目から涙が一粒零れてきた。

私は慌ててそれを拭い、それ以上涙が零れないように、大きく深呼吸をした。

 
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