モノクロ
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先輩と三神さんが二人でご飯に行った日から、1週間が経つ。
定時から30分ほど過ぎた頃、私は佐山さんにお使いを頼まれ、資料の束を抱えて総務部に向かっていた。
エレベータで総務部のある1階に向かい、総務部の扉を開ける。
その瞬間、目に入ってきたのは営業部長と話している三神さんの姿。
三神さんの笑顔に胸がちくんと痛むのを感じたけどそれを振り切るようにして、資料を渡す人の元へと向かう。
「よろしくお願いします」
「はい。確かに」
任務を終え踵を返すと、営業部長との話を終えてファイルを棚に戻していた三神さんと目が合った。
ついびくっと体を跳ねさせてしまった私に反して、三神さんはいつものように綺麗な笑顔を私に向ける。
この前のような敵意は一切ない、余裕さえ感じる笑顔。
その様子に、私の頭の中に浮かんだのはたったひとつのことだった。
……もしかして、先輩とうまくいったの……?
ぎゅうっと捻られるような胸の痛みを感じながらも何とか笑顔で会釈をし、私は三神さんの笑顔から逃げるようにして総務部のオフィスから出た。
もやもやした気持ちを抱えたままオフィスに戻りたくなくて、私は会社の建物から外へ出た。
お昼にはランチをする女子社員で賑わう、会社の敷地内にあるベンチに座り、一人空を仰ぐ。
冬が近付き、日が落ちるのが早くなっていて、空は太陽が暮れてしまってほんの少しだけ残っているオレンジと夜が近付く瑠璃色とのグラデーションで色づいていた。
「はぁ……」
誰もいないことをいいことに、私は思いっきりため息をつき、顔を手で覆って俯いた。
……もうこんな気持ちになるのは嫌。
三神さんの気持ちを知ってからは、先輩のことを好きだという気持ちが加速するように急激に強くなっていて、それと共に強く感じ始めたのは……“妬み”。
先輩のことをたくさん知っている三神さんへの嫉妬。
先輩とずっと近い距離にいる三神さんへの嫉妬。
そんな気持ちを膨らませても無意味だって頭ではわかっているのに、私の意思に反発するようにどんどん膨らんでいく。
きっと先輩への想いを断ち切らない限り、この苦しみがなくなることはない。