闇
何処を見てるんだ私は。
只の変態じゃん。
「……こ、此処で何してるの?」
思い切って そう訊くが、彼は此方を見る事すら しない。
うわ〜……噂、ほんとだったんだ。
聞いた話によると、何人かの女子生徒が、彼に一目惚れし、告白しようと体育館裏に呼び出したらしいが、彼は呼び出しに返事を しない事は疎か、体育館裏に足を運ぶ事すら しなかったらしい。
そう。
彼は、誰に対しても、兎に角 無視なのだ。
適当に あしらうとか、キレるとかじゃなくて、ガン無視。
それでも、彼に恋する乙女は、後を絶たないのだ。
ところが、私は ある事を思い付く。
幾ら人付き合いを しないからと言って、クラスマッチの日に屋上に独りで居ると言う事は……。
「……ね、もしかして椎名君も、運動 苦手なの?」
そう訊くと。
「…………。」
彼は初めて、私の瞳を直視した。