溺愛トレード
だけど、私は実乃璃を知っていた。
いつもこの時間になると、運転手つきの車で現れて、車の中からちょこんと顔を出して私たちが遊んでるのを眺めていた。
学校にあんな子はいないし、変な子と思ってた。
その車はほんの数分公園の前に停車して、うちの近所でも「お城」と呼ばれているお屋敷に入っていく。
「変な子ー! みんな、あっち行って遊ぼ」
リーダー格の子がそう言うと、みんなは「うん、そうしよう」となる。
実乃璃はスカートの裾をきゅっと握りしめて下を向いた。
「ねえ、そのスカート可愛いね」
友達はみんないなくなったけど、私は一人その場に残った。今考えると、その行動がこんなにも自分の人生を大きく変えてしまうなんて、悔やんでも悔やみきれない。
「私、乃亜。名前は?」
「実乃璃」
「実乃璃ちゃんね。地面に枝で絵書いて遊ぶ? それくらいなら出来るよ」
「ほんとう? 私も遊べるの?」
実乃璃は今の千倍純粋だった。可愛い目をキラキラさせて、私が探してきた枝を握りしめて、モナコにある別荘の見取り図を書いてくれた。