合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
「春さん、ご無沙汰です。またストレス発散ですか?」
受付のイケメンアルバイト、確か名前は水木君。大学の三回生。
童顔な笑顔の割りに、身体はガッチリとした体育会系。
スポーツ生理学? とかなんとか専攻のトレーナーの卵なんだって。
「やっぱ、わかる?」
「えぇ、ちょっこっと」
親指と人差し指の間を少しだけ空けて、躊躇いがちに水木くんが笑った。
「この歳になると、ストレスが顔に出て困るわぁ」
わたしは頬に手を当て自嘲気味に呟いた。
「大丈夫っす!
ちょっと動けば、ストレスなんて吹き飛びますよ。
あ、でも久々だから無理はいけませんよ、どこか痛めたら元もこもないっすから。
僕、良かったらサポートしましょうか?」
「そう? 悪いわね」
「いえいえ、仕事っすから。
じゃ、春さん、着替えたら、声かけてください」
人懐っこい笑顔で見送られ、わたしはロッカーに着替えに向かった。
一応、体力増強のプログラムを組んで貰ってはいるものの、一月に数えるくらいしか通えないわたしにとって、その日一日がいつも初めてのようなものなのだ。
肩が凝ってるとか、腰が痛いとか……
その日の体調を鑑みて、マシンプログラムをアレンジして貰うのが常だった。