真夜中に口笛が聞こえる
「誰もいないようだ。小窓から見える範囲だけど」

「変ね」

 美咲がそう言った時である。

 ザック、ザック、ザック……。

 家の回りに敷いた砂利を、踏みしめる音がする。


 誰かいるのか?


 ザック、ザック、ザック……。

 足音が近付いてくる。

 お互いにその仕草が分かるほどに、息を飲んだ。


 侵入してきているのか?


 信一郎は急いで小窓を閉めて、音がしないように、ゆっくりと鍵をかけた。

「信ちゃん、私、怖い……」

 美咲は両手で耳を塞ぐ。

「大丈夫……。大丈夫だから」

 口笛と足音……。


 真夜中を徘徊するそれらが、家族三人の住む新居を、包み込んだ。



プロローグ

完結





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