ピエモンテの風に抱かれて
「リュウ! たくさん飲まされたでしょう? 大丈夫?」
「これくらい何てことないさ。ジュリのムースも頂くよ。これを食べられるのも……」
「え?」
「いや、何でもない。ジュリは働きすぎだよ。ちょっと休もう」
グラッパの入ったショットグラスとチョコレートムースを手にしながら移動する。さっきまでの騒がしさが嘘のように感じる部屋の窓から見えたのは、満天の星空。
「うわあ、今日は天の川がハッキリ見えるのね。織姫と彦星はどれ?」
「天の川の右で一番光ってるのが織姫のヴェガ、左が彦星のアルタイルだよ…」
樹里の感激をよそに、龍は左手でスプーンを持つと、少し落ち着かない様子でムースを食べていた。
「そういえばジュリは、織姫と彦星が一緒に暮らせますようにって、短冊に書いてお願いしてたよね? ずっと昔、オモチャの竹にぶら下げて」
「あの話は今でも酷いって思うの。結婚した二人が遊んで暮らすようになったから、神様の怒りに触れて引き裂かれたのは分かるんだけど…」
龍は首を縦に二度振ると、樹里の代わりに続きを言った。
「真面目に働くようになったんだから、元通りにしてあげればいいのに、だろ?」
「その通りよ。それでも一年に一回しか会えないなんてひど過ぎるわ」
龍は、俺もそう思うよ、と一言つぶやくと紙袋から何かを取り出した。
「はい、約束のプレゼント」
それはリボンがかけられている小さな、小さな箱。
「開けてみて」
リボンがとかれると、中から出てきたのは…
「え? ええぇー!?」