ピエモンテの風に抱かれて
衝撃のスキャンダル


「皆様、3時間も飛行機が遅れるなんて大変でしたね。でも初日のイタリアはいかがでしたか? 日本と違って、気温が高くても湿度がないから過ごしやすいでしょう?」



大型バスに団体で乗っているのは日本人観光客だ。みな笑顔で首を縦に振っている。



樹里は日本語で書かれた < 旅のしおり > を指さし確認すると、締めの挨拶に入った。



「明日は9時にロビーに集合です。よろしくお願いしまーす」



「色んな国に行ったけど、ジュリさんのガイドはすごく分かりやすかったわ。日本語も上手だし、これからも頑張ってね。本当にありがとう」



そう言って何度も頭を下げ、ペコペコとお辞儀をする姿は日本人独特なものだ。樹里は微笑みながら彼らを見送った。




− 日本人て、本当に丁寧なんだから −




そしてバスの中に忘れ物がないかを確認すると、更に感心させられる。



「こんなにバスを綺麗に使ってくれるなんて…」



ほとんどゴミが落ちていない車内。一度下げた椅子の背もたれまで元の位置に戻っている。



< 世界で一番好かれるトラベラー > というランク付けで、常に上位を誇るのが日本人である。


公共の場を綺麗に使う。礼儀正しい。時間に正確。大騒ぎをしない。わがままを言わない、などが理由に挙げられる。



今日、樹里がガイドをしたお客さんも、キッチリと集合時間を守っていた。一分でも遅れようものなら必ず小走りで戻ってきて、待たせた全員に謝りまくる騒ぎだ。



勿論そんな日本人ばかりとは限らない。良くない噂も色々聞くが、少なくとも樹里は会ったことがなかった。



そんなことを考えながらバスの最後尾までくると、座席に残っていた一冊の雑誌に気付いた。



「派手な表紙ね。日本の女性週刊誌?」



そこで目に飛び込んできたのは…





− な…に、これ −






表紙に2番目に大きく書いてある見だしだった。




< 真田龍 熱愛発覚!! >




すぐさまページをめくる。芸能界にいれば、そんな噂の一つや二つあってもおかしくはない。



しかし樹里を動揺させたのは二枚の写真だった。



深々と帽子をかぶった龍が、女性と仲睦まじく腕を組んでいる。もう一枚は…






























キスをしていた −。

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