ピエモンテの風に抱かれて
今日もありきたりのジーンズと綻びた無地のTシャツを着た龍が、そっと答えた。
「ああ、そうだよ。女って不思議だよなー。サーシャみたいな何考えてるか分からなくて冷たい雰囲気の男って、なんかそそられるんだって。ミステリアスな感じがいいとか言ってたよ。俺がクールダウンできるのとは、ちょっと意味が違うみたい。
で、サーシャの彼女がロシアにいるのをいいことに、みーんな彼を狙ってんだ」
「狙ってる? あ、そういうことなら…」
そんな話をしている内に、ふと隣にいる自分の彼氏のことが気になってしまった。
「全然話は変わるけど、リュウにはその…、ファンクラブとかないの? モテるのはあなただって同じでしょう?」
すると龍は口角を最大限にあげた。