ピエモンテの風に抱かれて

テレビの中の龍は、ファッションショーの写真で見た悪魔的で妖艶な印象とは全く違っていた。




− こんなに色んな顔を持てるようになったんだ… −




全身が上品な白で統一された今日の装いは、元々長い足が更に長く見えるスリムパンツに、袖が半分まくられた夏用のジャケット。袖から伸びている血管が浮き出たセクシーな腕と、第3ボタンまで外したシャツから見える健康的な鎖骨に目を奪われた。

さらに磨きがかかった亜麻色のサラサラヘアの前髪は、くっきり二重の丸目に半分かかって一番ハンサムに見えるように計算され、すっと通った鼻筋と少し薄めの唇で優しい笑顔を作っている。


その姿はまさに白馬に乗った…、


遠い昔に読んだ、童話に出てきた王子様のようだった。



「う〜ん、サーシャといいリュウといい、ジュリったら本当にイイ男に囲まれてたのね。うらやましいな!」



飛鳥の台詞に上乗せするかのように、女子アナもウットリしながら龍を見つめていた。



「この番組でも色んなイケメンさんと会ってきましたが…、まだまだ日本は狭いなぁと感じますよ。
真田さんは日本人にはない美しさがありますね。お母様がイタリアの方でしたっけ」



「そう言ってもらえると有り難いですけど、昔はこんな顔がコンプレックスだったんですよ」



「コンプレックス? 真田さんが? どうしてですか!?



「もはやトラウマとも言えるかも知れませんね。初めて会う人に、こんな風に顔をジィーッと見られては…」



そう言いながら女子アナの目をジッと見つめると、一目瞭然で彼女の頬がポッと赤らむのがわかった。



「やだ。目で犯すって、このことよね。リュウもやるじゃない!」



飛鳥の言う通りだと思う。昔はそんな振る舞いをする彼は、演技でしか見たことがなかったのだ。するとどんどん焦りが生じてきた。



「そ、そんな目で見つめないで下さい。照れちゃうじゃないですか〜〜!」



頬を更に紅潮させて照れまくる女子アナに、龍は、まあまあと言わんばかりに彼女の背中をポンポンと2度叩いた。

それを見た樹里は、またハッとしてしまった。




− リュウが気軽に女性に触るなんて…? −


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