ピエモンテの風に抱かれて
− 女の人…!?−
「あ、あの! 間違ってたら……ごめんなさ……これは真田さんの携………じゃないん…です……?」
確かめようとしたその時、急に窓の外が暗くなりピッピッピッという電波が弱くなる警告音が耳を貫いた。何ともタイミングが悪く、電車は長いトンネルに入ってしまったのだ。
ツーツーッー…、という虚しい音と共に、結局電話は切れてしまった。
「もう、私ったらバカなんだから! 電車を降りてから掛ければ良かったのに…」
自虐しながらも、念のためパスポートに記した番号と発信した番号を照らし合わせた。やっぱり間違っていないことを確かめると、次はよからぬ不安が頭を過ぎった。
− 今のって、まさか熱愛報道の彼女じゃ……? −
< ご乗車ありがとうございました。終点です。お忘れ物ございませんように… >
車内アナウンスが流れると、電車はいつの間にか忘れ物が置いてある駅に着いていた。