ピエモンテの風に抱かれて
言われるがままに奥へと足が向く。188cmの龍の身長でさえ圧迫感がない高い天井。広いリビングはシックな黒と白で統一され、ムードある間接照明が目に優しい。そして60インチ以上はありそうな大きなテレビ。
キッチンにも最新式家電製品が置いてあり、まるでモデルルームのようだった。
「リュウ、一人暮らししてるの? この部屋凄い…。凄すぎる」
さすがに売れっ子芸能人の部屋は違う、と樹里は感心する。それと同時に自分は場違いなのでは、という不安にも襲われた。
そんな樹里の微妙な表情を察すると、龍は隣の部屋の扉を開けた。
「全然凄くないよ。俺が生活してる部屋はここだけ。ほら」
「え?」
目に飛び込んできたのは…。