片恋綴
恋愛初心者の私でもそう感じる程に不可解なもの。難しいもの。一筋縄でいかないもの。悩むもの。嬉しいもの。楽しいもの。苦しいもの。
……それが恋愛なのだが、片想い程度では語れないものは沢山あるのだろう。
それでも、片想いでしか語れないものもあると思う。
美味しそうにいつもの――ただのアメリカンを啜る原崎さんを見ながらそんなことを考えた。
今日は店員は用事があって午後から店に顔を出すと言っていたので、常連客はいつもより少ない。常連さんのなかには店員と話をするのを楽しみにしている人もいるから。
若いんだか若くないんだかよくわからない人物なのに。
「……琴子ちゃんは、好きな人とかいないの?」
原崎さんの質問に首を横に振る。彼女がいるから、取り敢えず嘘を吐く。祐吾君の耳に入るのが嫌だから。
「なんだ。どんどん綺麗になるから好きな人でも出来たから思ったのに」
こんなことを言えるのは私には気なんて少しもないから。祐吾君と一緒。
私は気付けるからいいけど、気付かずに舞い上がる女の子もいるから気を付けたほうがいいと思う。