片恋綴


「ならさ、俺の友達が琴子ちゃんを紹介して欲しいみたいなんだけど、どうかな?」

私は原崎さんの言葉に首を傾げる。

「この間一緒に来た奴、覚えてるかな?」

一応接客業なので、お客さんの顔を覚えるのは得意だ。私ははい、と頷いた。

「そいつがね、琴子ちゃんに一目惚れしたみたいで、友達からでいいから、てさ」

自慢じゃないが、そんなことを言われたのは初めてだ。私はそれが冗談にしか聞こえなくて、目を見開いた。

「そんな顔しないでよ。嘘とか悪戯じゃないよ?」

原崎さんが大笑いをするので、私の顔はそんなに酷かったのかと思ってしまう。原崎さんがそんなことをする人じゃないのはわかっているけど、信じられないのだ。

「駄目?」

「……駄目、というか、その、今は誰とも付き合うつもりはない、ので……」

突然の出来事でしどろもどろになってしまう。そこに嘘があるから余計に。

「……今の答え方だと、なんか俺が告白したみたいになってるんですけど?」

原崎さんが眉をひそめる。そう、原崎さんは自分の心を素直に表に出す人で、その言い方が少し意地悪なのだ。



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