片恋綴
「浩輔君、ですか?」

恐らく、彼女も僕と琴子の関係は美春ちゃんから聞いているだろう。幼馴染み、と。

そこを越えられなかったのは僕が臆病だったからか。それとも単に油断し過ぎただけなのか。

「浩輔君はいい人ですよ。真宏──あ、友人なんですけど、その人の面倒もよく見てますし。何より、真面目ですから」

だから、幼馴染みが付き合うのに心配はいらない、と言われているようだった。僕が幼馴染みに初めて出来た彼氏を心配していると思われたのだろう。

いっそ、最低な男だったらよかったのに。だったら、奪うことが出来たのに。

あんな男はやめて、僕にしておけ、と言えたのに。

そう思う反面、安堵する自分もいる。

いい男のようでよかった、と。

──恋とは矛盾。

ずっとそう思ってきた。琴子に対しての僕の想いはずっとそうだったのだ。

綺麗だと思っても言えないし、好きだと思っても言えない。

出来たのは傍にいることだけ。でもそれは幼馴染みとしてだ。それ以上の関係ではない。

「それならよかった」

僕は半分本当、半分嘘の科白を吐いた。

そして千歳さんの綺麗な黒髪に再び手を伸ばす。

琴子の黒髪が本当に好きだった、と思いながら。






< 133 / 146 >

この作品をシェア

pagetop