片恋綴
髪を結って欲しい、とそれは本当に突然の電話だった。

仕事が休みの日、午前中に琴子から電話がかかってきた。理由を訊けば、デーとだから、と。

僕はそれに仕方無いな、とわざと素っ気ない声で答えた。

本当は嬉しかった。

彼氏が出来てしまった幼馴染みに会う口実が出来たから。彼氏が出来てしまったら、当然、簡単に家に行ったりは出来ないのだ。

「ごめんね。休みなのに」

アパートを訪れた僕に琴子はすまなそうに言った。

「お金、取るけどね」

冗談混じりに言うと、彼氏がいる女の部屋には上がらないんじゃなかったの、と返された。

「なら、帰ろうかな」

「嘘。上がって」

琴子はくすりと笑いながら言った。



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