片恋綴



まさか、聞かれていたなんて。まさか、見られていたなんて。
恥ずかしさと同時に申し訳なさが募る。

彼は長めの前髪から隠れ掛けた瞳でじ、と私を見てきた。

「すみませ……」

「謝らないで下さい。人に頼んだりした俺がいけなかったんです。本当はこういうことは、きちんと自分から伝えなきゃいけなかったのに。こちらこそ、本当に申し訳ありませんでした」

深々と頭を下げる彼に私は言葉を失った。

「それにぃ、振ったこと謝るなんて失礼だと思うよ?」

「原崎。お前は口を挟むな」

彼の言葉に原崎さんが唇を尖らせる。

「では、改めて言います。俺は貴女を一目見て、素敵だと思いました。容姿だけではなく、接客しているときの笑顔、態度、全てが素敵だと思いました。貴女と直接言葉を交わしたことはないので、これが恋かどうかはわかりません。ただ、これから親交をふかめていけたら、と思います。よければ、友人としてお付き合い下さい」

……こんな丁寧な申し入れを断れる存在がいるなら見てみたい。

「だから、君はそうやって堅苦しく言うから代わりに言ってあげたのに」

原崎さんがうんざりしたように口を挟む。


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