片恋綴
「ねえねえ、祐吾君」
撮影の合間、少し休憩を取ろうということになった。理由はあまり長時間だとこういったことに馴れない理生が疲れてしまうから。それを提案したのは原崎さんだった。
こんな気遣いを俺が出来たらよかったのにな、とか考えながら俺を呼ぶ原崎さんを見上げた。撮影所の裏で煙草をふかす。
原崎さんも一服しにきたのかななんて思いながら少しだけ右にずれる。
「じゃーん、佐南さんのカメラ」
原崎さんはにこにこしながら大きな一眼レフのカメラを見せてきた。それはデジタルカメラではなく、フィルムを使うもので、殆ど佐南さんは使っていない。それでも仕事場に持ってきているということは必要なものということ。
「……何持ってきてんすか」
原崎さんは小さな悪戯をするのが好きな人。俺には到底ない軽さを秘めた人。――いや、秘めてなんていないか。
「置いてあったから借りてきた」
原崎さんは楽しそうに言う。つまりそれって、無断拝借じゃないか。
……それはさすがにまずいと思う。