片恋綴

「フィルムなら現像するまでどんな写真になってるわからないし、浮かび上がってくるとき、凄くわくわくするんだよね。でも、デジカメだとその場でわかっちゃうでしょ？ なんか、つまらない」

原崎さんはそう言って拗ねたように口を尖らす。

「佐南さんも同じ考えの人でね、ああ、今は効率の為に仕方無くデジカメ使ってるけどさ。ま、その方が鮮やかだし、綺麗な写真にもなるんだけど」

そのわくわく感は俺にはわからない。いつかカメラを構えたいとは思っているが、そんなふうに写真の出来とかを考えたことはなかった。

「だから、佐南さんは大切なものは全てこれで撮ってるんだよね」

原崎さんはにやりと笑いながら俺を見てきた。その顔は確実に何かを企んでいるもの。

俺はその場から立ち去ろうとも思ったが、それと同時に変な好奇心が沸いてきた。なんだろう。俺はこんなふうに何かを仕出かすタイプの人間ではないのに。