片恋綴
「佐南さん、片付けは俺達がやっておくんで、先に帰ってゆっくり休んで下さい」
原崎さんがいつも以上ににこやかに言うと、何かを感じ取ったらしい佐南さんが怪訝な表情を作る。端整な顔を歪ませ、こちらの真意を窺うかのような瞳。
「大丈夫ですって。たんに佐南さんを労ってるだけですってば」
明らかに嘘くさいです、原崎さん。俺は佐南さんに睨まれながら無表情を貫くのに精一杯だった。
「……なら、頼んだ」
佐南さんは渋々、といったふうに言い、近くにいた理生に声を掛けた。理生は思ったより原崎さんと交流を図れなかったらしく、少々寂しそうだ。それでも綺麗に着飾り、プロのカメラマンに写真を撮ってもらったことを嬉しそうにもしている。
「じゃあ、この子に今日のお礼に飯奢ってくるよ」
佐南さんは理生の細い肩を軽く叩いた。それって、二人で、てことか?
それに気付いた俺は途端に心の中で慌てるが、原崎さんに小声で止められた。