片恋綴
「大丈夫。佐南さんは女好きとかじゃないから」
いや、そんなことは知っているが、絶対なんていうことはない。
「それに、二人きりにはならないから」
確信のない言葉なのに、妙に説得力を感じ俺は何も言わなかった。
「いってらっしゃーい」
原崎さんがにこやかに送り出すので、理生は少々複雑な顔をしていたが静かに佐南さんに従った。多分、本人も自分の想いが報われないことは知っているのだろう。
二人が乗った車を見送ると、原崎さんは浮き足立った様子で撮影所の中へと戻っていった。その後ろ姿はまるで子供みたいだ。
「祐吾君、早く」
そんな姿をぼんやりと眺めているとそう言われ、俺は慌てて原崎さんを追い掛けた。