片恋綴


初めて入る現像室は何処か想像と違っていた。何が、と問われると言葉にするのは難しいのだが、なんというか、たんに作業をするだけの場所には思えなかった。

ここに色んなものがある。漠然とそう思えた。

そして現像のやり方など全く知らない俺は原崎さんの行動を眺めているだけだった。原崎さんは鼻歌を奏でながらカメラからフィルムを取り出す。

そのあとは正直何をしているのかわからなかった。それも暗い部屋なので仕方無いと思う。そしてやっぱりそれは面倒だと思った。

デジカメならパソコンで簡単に現像出来るのに、と。

それでもそれと同時に妙な高揚を感じていた。濃い茶色の細長いフィルムに一体何が隠されているのか。そう思うとわくわくした。

人が撮ったものだからなんだろうが、もし自分が撮ったものだとしたら、どんな出来になっているかわくわくするのだろう。

なんとなく、原崎さんが言っていた意味が理解出来てきた。……これは楽しいかもしれない。

俺はそう思い、紙を現像液に浸ける原崎さんの隣に移動した。



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