片恋綴



写真の中では小さく微笑む女性。愛らしい姿はこちらを向いてはいない。隠し撮りみたいな写真。

正直、佐南さんがこんな写真を撮っていることは意外だった。

「……付き合わせてごめんね」

原崎さんが写真を見詰めながら言う。

「はい?」

俺は原崎さんが何を言いたいのかわからずに彼の横顔を見た。

「ここに何が写ってるのか、知りたかったんだ。何となく予想はついてたけど、それでも確信したかったんだ。……理由はちょっと言えないけど」

ぼそぼそと言う原崎さんはらしくなかった。知りたかった理由を知りたかったが訊くのも憚られて、そうですか、とだけ返した。

この写真が意味することを俺は知ることはないのだろう。でもなんか、意外な原崎さんを知れたからよしとも思えた。

何を考えてるのかもわからない原崎さんにも、一人では出来ないこともある。佐南さんがこんなに想いの詰まった写真を撮ることが出来る。

大人だから完璧ってわけじゃない。



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