片恋綴
「私ね、少し前に失恋したんだ」
琴子さんは洗ったコーヒーカップを拭きながら話し始めた。私の頭にはどういうこと、という言葉が浮かぶ。
衣川さんは琴子さんのことが好きなのに。ということは、琴子さんには他に好きな人がいたということだろうか。
「ずっと言うつもりはなかったんだけど、やっぱり伝えなきゃ、て思って告白したの。まあ、結果は最初からわかってたんだけどね。私の気持ちを知って欲しい、て思えた」
何で琴子さんがこんな話をしているのかわからなかったが、私は聞き続けた。話している琴子さんの顔があまりに綺麗だったから。
「そしたらね、すっきりした。いや、すっきりした、て可笑しな話なんだけど。知ってもらえたってだけで、嬉しく思えた。それで、はい、そうですか、て好きじゃなくなるわけじゃないけど、少しずつ思い出には出来るようになったよ」
琴子さんはそう言って、本当に綺麗に笑った。