片恋綴
「お久し振りです」
柔らかな声にふと顔を上げると、そこには小柄な女の子がいた。結城美春。俺を空中浮遊する海月と称した子。
「おはよ。また短期のバイト?」
訊くと美春ちゃんはこくんと笑顔で頷いた。
彼女は佐南さんの同級生の妹さんで、たまにこうして短期のに入る。
「あ、この人」
バイトの祐吾君が口を開いたので、俺はその口を手で塞いだ。すると祐吾君はもごもごと何か言ったが俺は更に力を込めた。
それを不思議そうな顔で見る美春ちゃん。
「佐南さん、奥にいるから挨拶してきなよ」
俺が言うと美春ちゃんはまだ不思議そうな顔をしながらもはい、と頷く。
それを見送ってから祐吾君の口を塞ぐ手を離した。すると祐吾君は乱れた息を整えてからこちらに視線を向ける、
「今のって」
俺は祐吾君の言葉に頷く。