片恋綴



少し前、佐南さんが大切にしているフィルム式のカメラに入っていたフィルムを勝手に現像した。そこに何が写っているか知りたかったから。

そしてそれに祐吾君を無理矢理付き合わせた。理由は一人で確かめるのが嫌だったから。

そこには必ず佐南さんの大切なものが写っているとわかっていたから。

祐吾君はただの俺の悪戯だと思ってはいるだろう。

そして、そこには写っていたのは美春ちゃんだった。

「……千歳ちゃんも可哀想に」

俺は本心から同情の言葉を口にした。

だって、可哀想じゃないか。元カレが実は男が好きで、当て付けでその想い人と付き合ってみたら本気になってしまって、でもその人には他に想う人がいる。

そんなことを考えていたら千歳ちゃんに冷たく当たるのが可哀想に思えてきたし、そう思うには他にも理由はまだある。

「え、何ですか?」

俺の呟きが聞こえなかったらしい祐吾君がそう訊いてきたが、何でもない、とだけ返した。





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