片恋綴
「おはようございます、先輩」

一台の自転車が窓の下に停まり、それに跨がっていたふんわりとした女の子が私に手を振る。

私のバイト先の後輩。

目が大きくて、ほんわかして、ふんわりといい匂いのする可愛い女の子。

「お前さ、俺には挨拶しないわけ?」

隣のベランダから祐吾君が不機嫌そうに声を上げる。彼女は祐吾君の高校時代の二つ先輩らしい。

「だって祐吾君、どうせ、ああ、とかしか答えないじゃない」

自転車の彼女は口を尖らせて言う。その仕草はとても女の子らしくて私が見ても可愛い。

「それに、幾ら卒業したからって、先輩にタメ口は生意気ですよ?」

彼女は笑いながら祐吾君に言う。

「そんなの今更じゃん。お前に敬語使う気になんてならないし」

隣にいるのは私が知っている祐吾君ではなくて。私はそんな彼らのやり取りをただ眺めた。

「あ、じゃあ、私はもう行きます。先輩、また後で」

彼女は私にふんわりと笑い掛けてから再び自転車を漕ぎ出した。



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