片恋綴
……気付いたのはいつからだっただろう。
祐吾君が見詰める先に。
此処に越してきたのは偶然だとまるで言い訳をするかのように言っていたが、それは本当なのだと思う。偶然越してきたところから、想い人を見ることが出来る。
私だったらそれは運命だと勘違いしてしまいそうだ。
祐吾君は生意気な口調とは裏腹にとても優しい視線を彼女に向けている。それでも彼女はそれに気付いていない。
まるで、私の視線を祐吾君が気付かないように。
「あ、琴子さんもそろそろ時間ですよね?」
祐吾君に言われ、私はうん、と頷いた。これから、彼女がいるところに私は向かう。
少しでも顔が見たくて、少しでも会話がしたくて、晴れた朝はこうしてベランダに出てきてしまうのだ。