片恋綴
「はい、紅茶」
俺の差し入れに美春ちゃんは嬉しそうな顔をした。
「……美春には優しく出来るのに、何で千歳には出来ない」
それを見ていた佐南さんがぼやく。
ここで千歳ちゃんの名前を出すなんて。別に彼の場合は美春ちゃんに嫉妬させたいとかではないんだと思う。というか、望みはないんだと思う。
あるなら、彼みたいな人がいつまでも行動に移さないわけはないから。
「優しくしますよ。千歳ちゃんが佐南さんと別れたら」
初めて言ってみる言葉。
多分、写真を見たからだと思う。誰かをひっそりと愛する人なら、もしかしたら俺の気持ちだって気持ち悪いとは思わないかもしれないから。
それでも勿論告げる勇気なんてないんだが。
「お前、千歳とよりを戻したいのか?」
なんて的外れなことを返してくるのか。
もう、それでもいいや、とか思えてきた。よくないんだけど。