片恋綴
「自覚して何か変わりました?」
俺が訊くと佐南さんは心底嫌そうな表情を作ってから口を開いた。
「厄介な奴に見付かったもんだな」
初めてこの人の写真を目にしたのはまだ十代の時だった。若手カメラマンの展示会。
ふらりと立ち寄ったギャラリーで見た。
綺麗とか感動とかではなかった。純粋に見惚れた。立ち止まり、ずっと見ていた。
そして佐南さんという人を調べ、アシスタントを募集していると知って応募した。
感銘を受けたのに、自分もカメラマンになりたいとは思わなかった。
――きっと、そのときから焦がれていたのかもしれない。
でもそれを認めるにはかなりの時間がかかった。
そして認めた矢先、彼の視線の先に気付いた。