片恋綴
「ま、何でもいいですけどね。それより、ご飯食べに行きません? 千歳ちゃんも一緒なんですけど」

真宏の神経をつい疑ってしまった。

今の会話の流れを事も無げに切り、挙げ句先日別れを告げたばかりの女と飯を食いに行かないかと誘う。

──こいつのことだけは一生掛かっても理解出来ないだろう。

俺はそう思いながら、それはないだろ、と返した。すると真宏は何でですか、と返してくる。

俺がそれに返そうとすると先に真宏が口を開いた。

「振ったからですか? それなら俺なんて振られたのに一緒にご飯食べるんですよ?」

それはお前らの都合だ、という言葉を飲み込む。

もし、本当に三人で飯なんて食いに行ったら有り得ない状況過ぎる。

元は真宏と千歳が付き合っていて、そこが別れ、その後俺と千歳が付き合った。そして、先日別れたのだ。なんという状況だ、それは。

千歳と付き合ったのは、真宏と別れた後、千歳はいつも暗い顔をしていて、それが気になり声を掛けるようになった。

千歳は俺がよく行く店の店員だったのだ。

そんなことから、ある日千歳に告白され、こいつと付き合うのも悪くなと思い承諾した。

……そのときは既に美春のことを想っていたのだが、それに蓋をして、気付かぬ振りをしていた。


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