片恋綴
「何なら、美春ちゃんも誘いましょうよ」

「どんな嫌がらせだ」

それをして、千歳が傷付くだけだと思わないのか。

──いや、それは俺のただの自惚れか。

もしかしなくとも、千歳はもう俺のことなど吹っ切っていて、食事の場に美春がいたって何者思わないかもしれない。真宏はそれを知っていて、こんなことを言っているのかもしれない。

「……事前に千歳に確認しろよ」

美春が来るならそれはそれで願ってもないことだ。

「やだ、佐南さん。超自惚れ」

やっぱりそうらしい。真宏の科白に文句を言う気も起きなかった。俺はそれを苦笑いで流し、スタッフに片付けの指示をする為に撮影現場に戻った。

美春は小さい身体でちまちまと片付けをしていて、何故こんな娘に惹かれたのかと考えてしまう。

年だって十近く離れているし、見た目も特別にいいわけではない。悪くはないが、なんというか、全体的に小さい。

顔も可愛いらしいが特別に美人だとか、可愛いというわけでもない。

だけれど、惹かれた。

最初から、というわけではなく、徐々にだ。

短期でバイトに来るようになって、一生懸命働いてくれて、そんな姿を目で追うようになった。でも、それを恋だとは思わなかったし、思わないようにしていた。

まさか、と思っていたからだ。

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