あなたのギャップにやられています

絵を描いた背景を聞いた後は、天使の表情が違って見えた。
幸せに包まれて微笑んでいるとばかり思っていた天使は、降り注ぐ光を喜ぶ一方で、どこか憂いを含んでいるように見えた。


見る人によって絵の解釈が違うというのは、きっとこういうことなのだと実感した。


私も……雅斗を失って、ふたりで過ごした日々がどんなに輝いていたのかを知った。
その気持ちを表現するなら、この絵のようになるだろう。

だけど……一方で天使の微笑みがどこか悲しげに見えたのは、きっと雅斗を失った私の気持ちが、天使に乗り移ったのだと思う。

雅斗の成功を喜んでいるくせに、どこかで悲しいとも思っている私。
すべてを覚悟の上で雅斗を送り出したのに、今更なに言ってるんだろうって自分でも思うけれど、それが正直な今の気持ちなのだ。


その絵を気に入った私は、すぐに画廊に持ってきた。

そしてその絵は、最初に目にとめた人に買われていった。


美大生にそれを報告すると、「無駄な経験はないんですね。辛い経験があの絵を描かせてくれた」としみじみ言っているのを聞いて、私もうなずいた。

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